権利証を無くしたらどうするか?

法務局で発行される登記済証や登記識別情報通知書(以下、「権利証等」とする。)無くした場合には、3つの方法によって所有権移転登記を申請することができます。
しかし、いずれもメリット・デメリットがあり、どういった場合にどの方法を採るべきかは登記申請を代理する各司法書士が判断します。
ここでは、権利証等を無くした場合にどのような手段があるか、及び私どもがどの手段を採るかを説明します。

 

権利証等を無くした場合の代替手段

大前提として、よく質問があることですが、権利証等を再発行することは法律上できません。
したがって、代わりの手段として以下の3つの方法のいずれかにより所有権移転登記等の申請を行います。

 

1 事前通知制度

登記官が権利証等を紛失した方に事前通知という手続きにより本人確認を行うことによって登記申請を完了させることをいいます。
具体的には、登記申請後に登記所から個人なら本人限定郵便、法人なら書留にて書類が届きます。
その書類にご実印を捺印して、登記所に返送すると、登記所は本人確認が取れたと判断して登記の手続きを進めることができます。

 

2 司法書士が作成する本人確認情報

登記申請の代理人となる司法書士によって作成された本人確認情報を登記申請と同時に提供することによって、登記の手続きを完了させることができます。
司法書士が作成する本人確認情報は、原則として事前に権利証等を紛失されたご本人様と面談して、間違いなく本人であることの確認が取れた場合にみ登記申請に提供します。
本人であるかどうかの確認は担当する司法書士や事例により判断します。

 

3 公証人の認証による本人確認情報

権利証等を紛失した場合の本人確認情報は、司法書士のみではなく公証人も作成が可能です。
司法書士が作成する本人確認情報と同様に、公証人が認証する本人確認情報を登記申請と一緒に提供することにより登記の手続きが完了します。

 

事前通知制度の利用の仕方

事前通知制度の一番のメリットとしては、費用がまったくかからないことです。つまり、金銭面では最も利用しやすい制度です。
しかし、事前通知制度は①登記完了まで時間がかかる②権利証を紛失した方から法務局へ返送が確認できないと登記が却下される恐れがある、等のデメリットがあります。
特に②に関しては、登記が完了しない可能性があるため、お金が動くような取引、例えば売買や融資・ローンに伴う登記手続きでは、登記申請が却下されると取引自体がダメになってしまう恐れもあるので、事前通知制度が利用できるケースは限られます。

 

司法書士が作成する本人確認情報の利用の仕方

司法書士が作成する本人確認情報のメリットとしては、①登記申請と一緒に提供するので手続きが通常の登記申請と同じタイミングで完了することや、②本人確認手続きが一番慎重なので安心なこと、等です。
しかし、デメリットとしては、費用が他の手段に比べると一番高いことが上げられます。
ただし、メリットから考えると、不動産売買等のお金が動くような取引でも非常に利用しやすい手段です。

 

公証人が認証する本人確認情報の利用の仕方

公証人が認証する本人確認情報のメリットとしては、①登記申請と一緒に提供するので手続きが通常の登記申請と同じタイミングで完了することや、②比較的費用が安くすむ(認証費用3500円)こと、等です。
メリットから考えると、不動産売買等のお金が動くような取引にも利用することも可能ですので、非常に有効な手段だと思います。司法書士や不動産業者の一部の方達からも推進されていることも多いです。
しかし、公証人による本人確認情報にはリスクもあります。それは、公証人の認証が後日の訴訟で無効になった場合、責任の所在が曖昧になりかねないことです。
さらに、公証人の本人確認は、非常に大雑把で司法書士に比べるときちんとした本人確認がされていないので、無効になる可能性は司法書士が本人確認する場合と比べて高くなることが考えられます。
したがって、①売主様の財産状況として費用を抑えなければならないとか、②買主様が上記のリスクを承知している、という条件が揃った場合にのみ不動産売買等で利用すべきかと私どもは考えます。

 

権利証等を紛失した場合の優先順位

結論として、私どもは優先順位としてまず「事前通知制度を利用した登記申請が可能かどうか?」を判断し、次に「司法書士が作成した本人確認情報を利用した登記申請」を提案させて頂いております

公証人の認証による本人確認情報は基本的には、お客様の希望がある場合のみに利用することにしております。

ただし、あくまで私どもが登記申請を行う場合の基準となりますので、ご了承くださいませ。

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