成年後見人の不動産売買

 

成年後見人が不動産売買(主に「売却」を想定しております。)を自由に行うことは基本的には認められておりません。

成年後見人は成年被後見人の財産を管理する責任があるので、成年被後見人の所有する不動産を売買することはそれなりの理由が必要です。例えば、本人の生活費や入院費・施設入居費等にあてることです。

成年後見人の不動産売買について説明する前に簡単に成年後見人とは何かを説明します。

 

成年後見人とは?

成年後見人は、本人が精神上の障害により意思能力を欠く状況になった場合に、家庭裁判所に申し立てることにより選任されます。

成年後見人が選任されると、本人に代わり財産に関する処分権や管理権が発生し、本人が所有する不動産を売却することも可能になります。

なお、成年後見人以外にも保佐人や補助人の制度があります。これらの詳細な説明に関しては、こちらのページをご確認くださいませ。

 

非居住用不動産の売却

成年後見人の不動産売却においては、非居住用不動産か居住用不動産かで大きく手続きが変わります。

非居住用不動産の場合には、先ほど説明したとおりの不動産売買の理由が正当であれば、特段の手続きを経ずに売却することが可能です。ただし、家庭裁判所には、非居住用不動産を売却することに関して、事前に伺いをたてることが望ましいです。

 

居住用不動産の売却

 

居住不動産の売却を行う場合には、非居住用不動産と違い、家庭裁判所の許可が必要になります。なお、この家庭裁判所の許可を経ずに成年後見人が居住用不動産を売却した場合には、その売買は無効となります。

では、次にどのような不動産が居住用不動産に該当するかどうかを説明します。

 

 居住用不動産とは?

 

居住用不動産とは、「(成年被後見人の)居住の用に供する建物又はその敷地」のことをさします(民法第859条の3)。具体的にいうと、本人が生活の本拠として現に居住の用に供しており、または将来居住の用に供する予定がある不動産を意味します。

なお、現在及び具体的な居住の予定があるわけではないが、過去において生活の居住の用に供していたことがあり、将来においてもなお生活の本拠として居住の用に供する可能性がある不動産についても居住用不動産に該当するものとされております。

したがって、大まかにいうと、現在・未来・過去に居住あるいは居住が想定される場合には、その不動産は居住用不動産に該当します。

続いて、家庭裁判所の許可の手続きについて説明します。

 

 家庭裁判所による売却許可決定

家庭裁判所の売却許可決定を管轄の裁判所に申し立てます。申立書には、①処分をする必要性、②処分の相当性、③売却代金の使途と管理方法、④推定相続人の意向等を記載する必要があります。申立書の書式に関しては、管轄の家庭裁判所にご確認下さいませ。

なお、申立時の主な必要書類(横浜家庭裁判所)は次のとおりです。

1 売却不動産の登記簿謄本

2 契約書案の写し

3 売却不動産の価格の妥当性についての資料(査定書及び評価証明書)

4 推定相続人の同意書

5 本人又は成年後見人の住民票あるいは戸籍謄本

(住所・氏名・本籍に変更があった場合のみ)

 

 居住用不動産売却の手続きの流れ

 

居住用不動産売却の手続きの流れは次のとおりとなります。

 

1 売買契約

※ 売買代金支払い及び家庭裁判所の許可を停止条件とする。

2 家庭裁判所の売却許可決定

※ 申立てから許可決定まで約1か月ほどかかります。

3 不動産決済立会い及び法務局への所有権移転登記申請

 

所有権移転登記の必要書類

 

所有権移転登記の必要書類としては、通常の売買による所有権移転登記の必要書類以外に下記の書類を準備します。

 

① 家庭裁判所の売却許可決定書

② 成年後見人の登記事項証明書

 

なお、居住用不動産を売却した場合、家庭裁判所の売却許可決定書を登記申請の際に添付すれば、権利証(登記済証または登記識別情報)が不要になります。

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