新中間省略登記の利用について
新中間省略登記とは、平成17年に施行された新不動産登記法により今まで実務上行われていた中間省略登記(以下、「旧中間省略登記」とする。)ができなくなった代わりに利用されるようになった新しい中間省略登記の方法です。
新中間省略登記は、旧中間省略登記と比べてメリットも多いので、不動産を転売する予定の場合にはどんどん利用すべきです。
中間省略登記とは?
まず、そもそも中間省略登記とはどんなものなのか、具体例を元に説明します。
具体例
Aさんが所有の甲不動産をBさんに売却しました。BさんがAさんから所有権移転登記を受ける前に、CさんにBさんが甲不動産を売却しました。
この場合、所有権移転登記は、本来、A→B→Cへと登記の名義を移転しなくてはなりません。
しかし、新中間省略登記を利用すればAからBへの所有権移転登記をせずに、AからCへ直接所有権の名義を変更することができます。
つまり、A→Cへの所有権移転登記が可能です。
新中間省略登記の利用方法
新中間省略登記を利用する上で絶対に注意しなくてはならないのは、所有権移転の効力をすぐには発生させないことです。つまり、上記の具体例に基づくと、所有権の移転はA→B→Cではなく、あくまでA→Cとしなくてはなりません。
では、どのようにA→Cとするかですが、新中間省略登記では、主に2種類の手法があります。
第三者のためにする契約を利用する方法
民法第537条において、第三者のためにする契約が定められております。
民法第537条(第三者のためにする契約)
1.契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2.前項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
では、実際にどのように第三者のためにする契約を利用するかというと、まず、売主Aが買主Bに甲不動産を売却します(以下、「第1売買契約」とする)。その後、Bが売主として買主Cに対して甲不動産を売却します(以下、「第2売買契約」とする)。
この第1売買契約には次の条件を特約として設けます。
特約1 第三者のためにする契約
第三者であるC(あるいはBの指定する者)が直接Aから所有権を取得する旨を定めます。
特約2 所有権留保
Bが所有権の移転先を指定するまでは、所有権がAに留保されたままであることを定めます。
特約3 受益の意思表示の受領委託
所有権の移転先に指定されたCが、Aに対して行うはずであった所有権移転を受ける旨の意思表示をAに代わりBが受領することができる旨を定めます。
特約4 買主の移転債務の履行引き受け
BがCに対して負う所有権移転義務を、Bの代わりにAがCに対して履行の引受けをする旨を定めます。
次に、第2売買契約においては、次の特約を定めます。
特約 第三者による弁済
BがCに対して負う所有権移転義務をAがBに代わって履行することをCが承認した旨を定めておきます。
以上の特約を設けることにより、AからCへ直接所有権が移転することが可能になります。
地位譲渡を利用する方法
第三者のためにする契約と比べると、比較的シンプルな方法で理解しやすいかと思います。
まず、売主Aが買主Bに対して甲不動産を所有権留保特約付きで売却します。
その後、買主Bが買主である地位をCに対して売却します。
CがBから取得したのは、あくまでAとBとの売買契約の買主の地位ですので、Cは所有権留保の条件を満たせば、AからCに対して直接所有権を移転することができます。
これが、地位譲渡を利用した新中間省略登記です。
どちらの方法を利用すべきか?
では、第三者のためにする契約と地位譲渡のどちらを利用すべきかですが、原則としては、「第三者のためにする契約」を利用した新中間省略登記をすべきです。
実は、地位譲渡を利用した中間省略登記には、宅建業法上の問題があったり、上記の事例でいえばCにAB間の売買代金がばれてしまいますので、差益が生じていると契約を履行する上でも問題になりやすいです。
したがって、宅建業のプロ同士の売買以外では「第三者のためにする契約」を利用した新中間省略登記にすべきです。
新中間省略登記でコスト削減!
新中間省略登記での最大のメリットは、登録免許税と不動産取得税がかからなくなることです。
登録免許税に関しては、本来A→Bの取引及びB→Cへの取引で計2回の登記申請が必要になるところが、新中間省略登記をりようすれば、A→Cの1回の登記申請で済みます。
また、不動産取得税に関してもBは所有権を取得していなことになりますから、Cのみが不動産取得税を課税されることになります。
新中間省略登記のまとめ
新中間省略登記は不動産の転売を予定している場合には非常にメリットがあります。
しかし、誤解しないで欲しいことは、転売が決まっていないようなケースでは登記の名義を必ず移すべきです。登記の名義を移さないことは非常に権利関係として危険です。
また、転売に時間がかかるようなケースでも一度所有権移転登記をすべきです。
新中間省略登記を利用しようと考えている場合には、司法書士にまず相談しましょう。